「デナリ/アメリカ・アラスカ」

2022年08月02日

デナリ(Denali)は、アメリカ・アラスカ州にある山で、北米大陸の最高峰。標高は6,190.4m(2012年の測量前は6,194m)。山名は、英語由来のマッキンリー山Mount McKinley)と長らく並び呼称されていたが、2015年よりデナリが正式な呼称となった。デナリは、北米先住民のデナッイア族の言語であるデナッイア語で「大きな山」を意味し、近隣に住むコユコン族の言語であるコユコン語では「高きもの」「偉大なるもの」を意味する英語ではコユコン語を語源として「Denali」、あるいは「Dinale」と呼び、これを「デナリ」と邦訳される。1897年(明治30年)連邦政府はこの山に、当時の大統領ウィリアム・マッキンリーにちなんで「マウント・マッキンリー」と名付けた1975年より、アラスカ州はデナリを正式名称とするよう、連邦政府に働きかけ始めた。1980年には州法に基づき、山を含む周囲にデナリ国立公園が設置され、同時に州地名局は山の呼称もデナリに改称したが、連邦地名局はマッキンリーを使い続けた。以降は2つの呼称が並存していたが、アラスカ人はデナリの名を好む傾向があり、連邦政府での呼称もそれに変更しようとする運動も行われた。一方で、観光客などは山をマッキンリー、国立公園をデナリと呼び分けることもあった。2015年8月バラク・オバマ大統領は山の名称を正式にデナリへ変更することを発表した。デナリはエベレストよりも大きな山体と比高(地理での高さは平均海面からの高さである標高が用いられることが多い。比高は、任意の2地点をとった場合、両地点の標高の差をいう。を持つ。エベレストの標高はデナリより2700mも高いが、チベット高原からの比高は3700m程度に過ぎない。一方、デナリはふもとの平地の標高は600m程度であり、そこからの比高は5500mに達する。高緯度にあるため、夏と冬の変化が大きい。夏は白夜になるが、冬は日照時間が非常に短くなる。日の出から日没までの時間は夏至では約22時間、冬至では4時間45分である。デナリは高緯度に位置するため気温が低く、夏でも山頂の平均気温は-20°C度程度となる。冬には5700m地点に据えられた温度計の最低気温が日常的に-40°Cを下回り、1995年には-59.4°Cを記録している。1969年以前には、中腹の約4600m地点で最低気温−73.3°C(−100°F)を記録したこともある。その影響でヒマラヤやアンデスの同一標高よりも気圧が低い。デナリ山頂と同一気圧になるヒマラヤの標高は、登山シーズンで比較するとデナリ山頂よりも約300〜450m程高い。気圧は夏よりも冬のほうが一段と低くなり、冬のデナリ山頂の気圧は夏のヒマラヤ7000m超に相当する。そのため、登山者にとっては高山病の危険性が比較的高くなる。冬にはジェット気流の影響からしばしば時速160km(秒速44m)の風が吹き下ろし、さらにデナリ・パスのような風が集まる地形ではベンチュリ効果(流体の流れを絞ることによって、流速を増加させて、低速部にくらべて低い圧力を発生させる機構である。イタリアの物理学者ヴェントゥーリにちなむ。ベンチュリ効果を応用した管をベンチュリ管、計測器をベンチュリ計という。)によって風速が倍増することもある。デナリ山には2つの主要な頂がある。南峰は最高点であり、北峰は5934mの高さである。北峰は南峰との鞍部から402m上るため、独立峰とされることもある。5本の巨大な氷河が山から発していて、ピータース氷河は北西に、マルドロー氷河は北東に流れる。マルドロー氷河の東隣にはトラレイカ氷河がありルース氷河は南東に、カヒルトナ氷河は南西に流れる。山体は花崗岩で出来ており太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込み、北米プレートの大陸地殻を押し上げたものである。1903年(明治36年)フレデリック・クックによって初登頂されたと報じられたが、彼に同行していたエド・バレルによって1909年(明治42年)に否定された。1913年(大正2年)6月、人類初登頂を達成したのは4人のアメリカ人達である。1947年(昭和22年)には、バーバラ・ウォッシュバーンが女性として初めて頂上に到達した。登山シーズンは4月後半から7月中旬4月、5月は寒く、7月になると雪が緩むので、6月中に登る人が最も多い。1990年以降、登山シーズンには毎年400人から800人ほどが登頂している。2015年までに冬季登頂を果たしたのは10隊17人で、うち5人が単独。冬のデナリでは6人が死亡している。  

1