「シナイ山/エジプト」

2022年09月29日

シナイ山(Mount Sinai)は、シナイ半島にある、モーセが神から十戒を授かったとされる場所。ホレブ山(Horeb)とも呼ばれる。聖書のシナイ山の正確な場所は定かではないが、アラブ人がジェベル・ムーサーあるいはムーサー山(Jabal Mūsā、アラビア語で「モーセ山」の意)と呼ぶシナイ半島南部の山(標高2,285m)に古くから比定され、「アブラハムの宗教」(聖書の預言者アブラハムの神を受け継ぐと称するユダヤ教、キリスト教、イスラム教の三宗教。)によって神聖視されている。ジェベル・ムーサーにはモーセに関わる伝承を持つ泉や岩が数多く存在し、土地の人々の信仰の対象となっている。3世紀には聖カタリナ修道院が建設された。一方、ジェベル・ムーサー近辺には聖書の描写に合致するような広大な平原が存在しないこと、エジプトからパレスチナへの通り道としては南すぎる、などの理由から、 近年、一部の聖書学者たちは、その北側のラス・サフサファ(Ras Safsafeh / Sufsafeh)をシナイ山と同定している。他方、ロン・ワイアットは、ミデヤンの地をアラビア半島北西部とし、シナイ山(ホレブ山)を、同地のラウズ山(Jabal Al-Lawz ヤベル・エル-ローズ 標高2,580m)に比定している。エジプト第一王朝以来、シナイ半島はエジプト王国の領域であり、出エジプトというからにはシナイ半島を出なければならず、モーセが割って渡った海も、紅海ではなくアカバ湾(の浅い部分)であったとしている。アカバ湾を渡れば、目指すミデヤンの地もラウズ山もすぐである。白川義員版の「世界百名山」は原則的に高山が選出されるが、その人類の精神史との重要な関わり、信仰の対象から例外的に選考されている。リストでは最も標高の低い山であり、次いで北朝鮮の白頭山(2,744m)である。

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