「鳥海山/山形県・秋田県」

2022年12月23日

鳥海山(ちょうかいさん)は、山形県と秋田県に跨がる標高2,236 mの活火山。山頂は山形県側にあるが、秋田県側に山頂があると主張する秋田県民で山頂争いになることが多々ある。山頂に雪が積もった姿が富士山に類似しているため、出羽富士(でわふじ)とも呼ばれ親しまれている。山形県では庄内富士(しょうないふじ)とも呼ばれている。古くからの名では鳥見山(とりみやま)という。鳥海国定公園に属する。日本百名山・日本百景の一つ。2007年(平成19年)に日本の地質百選(「日本の地質百選選定委員会」による地質学的にみた日本の貴重な自然資源を選定する百選。)に選定された。2009年(平成21年)に国史跡「鳥海山」として指定された。山体は山形県の飽海郡遊佐町(あくみぐんゆざまち)・酒田市と秋田県の由利本荘市・にかほ市の4市町に跨がるが、山頂は飽海郡遊佐町に位置し、山形県の最高峰である。東北地方では燧ヶ岳(ひうちがたけ、標高: 2,356 m)に次いで2番目に標高が高く、中腹には秋田県の最高地点(標高: 1,775 m)がある。山頂からは、北方に白神山地や岩手山、南方に佐渡島、東方に太平洋を臨むことができる。山の南側には夏、「心」の字の形に雪が残る「心字雪渓」がある。山頂付近には夏場も融けない万年雪(小氷河と表現されることがある)が存在することや、氷河の痕跡として特徴的なカール地形(氷河の源流部で形成された谷のことで、氷河の侵食作用によって形成された地形の1つ。)が存在することから、かつて氷河が形成されていたという説がある。このため、山麓の市町村では「氷河」を冠した特産品が見受けられる。鳥海山の固有種としてはチョウカイアザミやチョウカイフスマがある。鳥海山は日本海に裾野を浸した秀麗な山容を持ち、多くの噴火によって畏れられ古くから山岳信仰の対象となった。豊富な湧水は山麓に農耕の恵みをもたらした。中世後期以来、徐々に修験道の修行場となり、鳥海山大権現、本地は薬師如来として崇拝された。南面からは蕨岡より登拝道をたどって山頂を目指した。江戸時代中期には「登拝講」が山麓に成立し、夏には多くの道者が登拝した。根拠地であった蕨岡は三十三坊を擁し龍頭寺を学頭とした。鳥海修験の山岳信仰の根底には、山を水分(みくまり)とする水への信仰があり、流れ出す川は月光川(がっこうがわ)と日向川と名付けられて神聖視された。鳥海山へは、南は蕨岡と吹浦、北は矢島、滝澤、小瀧、院内などから登拝道が開けていた。江戸時代以降、蕨岡と矢島は当山派の醍醐三方院(さんぼういん)に帰入し、真言系の修験となった。山形県側は、明治以後、修験道の廃止に伴い、神仏分離の激動を経て、大物忌神社(おおものいみじんじゃ)は、山麓に二つの口の宮、吹浦(山形県遊佐町)、蕨岡(山形県遊佐町)、山頂に本社を祀る形式をとることになった。大物忌神社は、出羽国一宮(いちのみや。ある地域の中で最も社格の高いとされる神社のこと。)として崇められてきた。日本海に浮かぶ酒田市の飛島には、鳥海山の山頂部が吹き飛んできて出来た、あるいは鳥海に住む鬼が神罰を受けた際に飛んだ首によって出来たという伝承があり、それが島の名前の由来になっているという考え方もある。また、飛島に祀られた小物忌神社(おものいみじんじゃ)は鳥海山の大物忌神社と対をなしているという説もある。